その相続放棄、ちょっと待った!

【ご相談】
先日、父が亡くなりました。高齢の母、私、妹、弟の5人家族でした。
父の財産としては、母と二人で住んでいた自宅の土地、建物、それと多少の預金があるくらいだと母から聞いています。
私たちきょうだいはみなそれぞれ家庭をもって生活しているので、父の財産は母に使ってもらいたいと考えています。
ただ、遺産分割協議?とか面倒くさい手続きはしたくないです。
ネットで見ていたら財産がいらない場合には、相続放棄をしたらいいと書いている記事を見ました。
きょうだいみんな相続放棄でもいいですか。
【回答】
リスクがあるので子供さん全員相続放棄はいったん考え直しましょう。
まずお父様の相続人が誰かを整理します。
お母様は配偶者なので、常に相続人になります。法定相続分は2分の1です。
お子様3人はそれぞれ6分の1の割合で法定相続分を有します。
これが何もしなかったときの、現時点での相続人です。
次にお子様3人が全員相続放棄した場合の相続人の状況を確認します。
相続放棄をした場合、最初から相続人ではなかったとみなされますので、3人共相続放棄が完了したら「お父様に子は存在しなかった」と法律上考えます。
法定相続人には優先順位のルールがあります。
第1順位が子、第2順位が親や祖父母、第3順位が兄弟姉妹になります。
配偶者はこの順位とは別枠で常に相続人になります。
子が存在しないとなると、第1順位の人が不在となるため、第2順位、第3順位の人へ相続権が移ります。
例えば、亡くなったお父様のご両親もしくは祖父母がご存命の場合には、お母様と、その方が相続人になります。
ご両親、祖父母がすでにお亡くなりであれば、お父様のごきょうだいが相続人に、お父様より先に亡くなっているごきょうだいがいらっしゃればその子(お父様にとっては甥、姪)が相続人になります。
要するにお母様+お父様の両親、祖父母、きょうだい、甥姪のいずれかが法定相続人になりその人達との間で遺産をわける話し合いをしなければならなくなる可能性があります。
みなさん話し合いにすんなり応じてくれればいいのですが……
お母様のために、と思ってやった行為が逆にお母様に大変な思いをさせることになるかもしれません。
面倒でもちゃんと遺産分割協議を行って、お母様に全部相続させるか、相続分の譲渡を行うなど他の手段のほうがリスクは少ないと思います。
このように、単純に見えて実は複雑な結果を招きかねなかったりするので、相続に関係することは、なにかとりかかる前に一度弁護士にご相談いただくのをおすすめします。
ギャンブルは免責不許可事由です!

【事案」
競馬で負けが混んでいたときに、ついつい熱がはいっちまって、サラ金から借入してまで金をつぎこんでしまったよ。
俺の収入は年間300万円、月に手取り20万円くらいだから、途中から借金をして借金を返していく日々になって、今じゃもう借金総額が800万円になってしまった。
妻と子にも愛想をつかされて最近じゃ同じ家にいても目もあわせてくれない。
弁護士さん、俺、どうしたらいいかな。
【回答】
収入300万円に対して債務が800万円となると、債務の金額的には自己破産(=借金を免責してもらって、返さなくて良くなる状態にする裁判所を使った手続き)をおすすめしたいところですが一つ問題があります。
債務が増えた原因がギャンブルなどの場合には、免責不許可事由に該当し、債務が免責されない可能性が出てきます。
簡単にいえば、自己破産の手続きをしますと裁判所にもっていっても、破産手続きは開始しますが、債務自体はそのまま残っています、ということです。
ただ、ギャンブルをするようになった経過や、裁判手続きをするうえでの対応など、様々な事情を考慮した結果、形式的には免責不許可事由にあたるけども裁量的に免責を与える(=借金を返さなくてよくなる状態に今回限りしてあげる)という判断になることもあります。
また、免責不許可事由に該当するし、裁量免責も貰えなさそうだなと思われるときには、個人再生という手続きをやってみるという方法もあります。これは、債務総額を圧縮して、少なくなった債務額を3年くらいで、毎月分割で返済していく、というものです。
ご説明いただいた事情だけでは、自己破産を狙っていくのか、個人再生をしていくのかの判断をつけられません。その人の借金が増えた経緯とか、今後の支払いに回せる余力がどれくらいあるか(つまり、収入はどれくらいか、支出は何にいくら使っているか、家族がいるならどれくらい協力を得られるかなど。)が重要な要素になるからです。まずは弁護士にご相談ください。一緒に借金をしないで生活できるように生活を立て直す方法を考えていきましょう。


