北海道みらい法律事務所
  • HOME
  • PROFILE
  • CONTACT
  • MAP

阿部洋介弁護士

1 相続を受けられない「近くの他人」

とある人が財産を残して亡くなった場合、たいていの場合は、その財産は、奥さんなり、お子さんなり、身の回りの方に相続されます。そのようになるのは、亡くなった方(被相続人といいます)が、生前にきちんと遺言を残していたり、遺言を残していなくとも、周囲の方が「法定相続人」にあたるからです。

では、法定相続人とはどのような人たちを指すのでしょうか。被相続人の世話をしたり、一緒に生活していれば、誰もが法定相続人にあたるのでしょうか。



1 法定相続人にならない人たち

民法では、法定相続人は、次のように決められます(民法900条)。

配偶者、子供

②(子供がいない場合)配偶者と直系尊属(亡くなった方の両親、祖父母)

③(子供も直系尊属もいない場合)配偶者と兄弟姉妹

これ以外の方は法定相続人にはなりえません。
ですので、次の方は、生前どんなに親しくしていても、遺言で定めがない限り、相続をすることができません。


・被相続人を献身的に支えてきた内縁の妻(夫)、縁組をしていない養子

・身寄りのない被相続人を親身に介護していた友人、近所の方

・血縁はないが何らかの事情で被相続人と生計を共にしていた方

あたかも家族のように暮らしていても、何らかの事情で、婚姻しない場合、縁組しないような方もいらっしゃいます。また、「
遠い親戚より近くの他人」というように、室蘭においても、一人暮らしの高齢者の方を、全く血縁もない周りの方が献身的に支えているケースをよく見かけます。
ただし、このような方々がいたとしても、これらの方々は、あくまで法定相続人にならない以上、相続は発生しません。
民法では、法定相続分を実際の絆の深さではなく、血縁の濃さによって機械的に割り振っているため、遠隔地でほとんど会ったことないのに棚ぼた的に相続を受けられる「遠い親戚」がいる一方、長年あたかも夫婦や親子同然に過ごしてきたのに一切相続を受けられない「近くの他人」が発生してしまうのです。
なお、法定相続人が誰もいない場合、被相続人の財産を相続できる人はいないことになるため、どれだけの財産があろうと全て国庫に帰属されることになっています。実際に親子、夫婦のような濃いつながりがある人がいるのに、たまたま法定相続人に当たらないため、被相続人の財産が国庫に戻ってしまう非常に釈然としない気がします。



2 法定相続人でなくても遺産の分配を受けられる?
一方で、民法では、以上のような人たちのために、「特別縁故者に対する相続財産の分与」という制度が定められています。これは、法定相続人がいない場合、一定の要件を満たしている「他人」に対して、本来であれば国庫に帰属する財産の全部又は一部を分与する手続です。

この手続により被相続人の財産の分与を受けるには、


①被相続人と生計を同じくしていた者

②被相続人の療養看護に努めた者

③その他被相続人と特別の縁故があった者


であることが必要です(民法958条の3)。
ところで、③「特別の縁故」とは、長年生活を共にしたり、被相続人の財産を管理したり、死後に葬儀、納骨、法要を行っているような場合を指します。つまり、このような人たちは、あたかも被相続人の家族のような存在であるから、法定相続人でなくても財産の分与が認められるのです。
ただし、特別縁故者として財産の分与を受けるには、一定の期間内に裁判所に申立てを行い、そのような事情があるか判断してもらう必要があります。そのため、もし、先立たれたのが「近くの他人」に当たる人の場合は、早急に専門家にアドバイスを求める必要があります。
でも、何より大事なのは、亡くなってから遺した人に、このような申立をさせる必要がないよう、お元気な今のうちに、遺していく人のために、何をすべきかを考えておくことです。
もし、身の回りにそんな「近くの他人」同士で支えあっている人たちがいたら、一度弁護士さんにお話を聞きに行ってみるようアドバイスをしてもらえたらと思います。


 

2 身に覚えのない郵便物が届いたら…

ある日、身に覚えのない会社から自分宛に郵便物が届いたら。消費者金融業者からの郵便について最近相談を受けた2つのケースをご紹介します。

①8年前に返したはずの業者から返済を求める郵便

Aさんは、「既に8年前に完済したはずなのに同じ会社から、借金の督促の手紙がきた、詐欺ではないか」と相談に訪れました。しかし、弁護士が介入して調査すると、借金はしっかり残っており、どうやらBさんは似た名前の別の業者と勘違いして完済していたと思い込んでいたのでした。このまま放っておくと裁判を起こされ、口座の差し押さえをされてしまう可能性が高く、弁護士に介入してもらったことで、難を逃れることができました。

②亡くなった弟の借金の返済を求める郵便

ある日、Bさんの自宅にクレジットカード会社から郵便物が来ました。Bさんはこれまでクレジットカードを持ったこともなく、会社名も自分になじみのない会社であったため、悪徳業者だと思い、封を開けずにいました。

しかし、立て続けにまた手紙が来たことから、試しに開封してみると、「数年前に亡くなった弟に借金があり、あなたは相続人にあたるから、弟の借金を支払いなさい」という内容の書面が入っていました。

これをみて、Bさんは「弟とはずっと疎遠で、葬式にも行かなかったが、確か弟には妻や子供がいたことから、自分が相続人になるはずがないだろう。この業者は、相続人だとか因縁を付けて金銭を要求してくる悪徳業者に違いない」と考え、懲らしめる方法はないか相談するために手紙を持って無料相談に来たのでした。

しかし、弁護士が内容を精査すると、弟の妻や子供は3年前に弟が亡くなった際にすぐに相続放棄をしており、兄であるBさんが法定相続人になっていることが明らかになりました。法定相続人は通常は奥さんと子供ですが、奥さんと子供全員が相続放棄をした場合は、今度は親や兄弟姉妹が相続人となります。Bさんの両親は既になくなっていたため、Bさんが法定相続人になるのです。

相続人は、亡くなった方の財産だけではなく、借金も相続することになります。Bさんはこのままだと亡くなった借金を相続する可能性が高いので、直ちに相続放棄の手続を取るように助言しました。

Bさんは、悪徳業者を懲らしめる方法がないか相談に来たにも関わらず、このときになってようやく自分が弟の借金を負担する危険があることを認識したのです。

身に覚えのない郵便物がきたら

このように、消費者金融業者からの手紙は、心当たりがない時に突然来る場合があります。そして、その場合、Bさんのように自分は借金をしたことがないような方に手紙が来る場合もあるのです。

 

不審な郵便物を来た際に、これを真に受けて行動してしまうのはもってのほかですが、自分で勝手に判断して無視を決め込むのも得策とは言えません。

消費者金融業者に限らず、内容が分からない郵便については、一人で判断せずに、専門家に手紙の内容を確認してもらうべきでしょう。

AさんやBさんのように事前にアドバイスをもらえて解決できた方も居れば、一人で判断した結果残念ながら手遅れの状態になって相談に来られる方もいます。

たかが手紙の確認くらいで、と思われるかも知れませんが、内容によっては、重要な法律問題が眠っている場合もあります。

手紙の確認も立派な法律相談です。室蘭市内でも、自治体や札幌弁護士会主催の無料相談会を行っています。当事務所でも、週に1回、無料相談日を設けています。

もし、心当たりのない郵便が届いた場合、周囲にそのような手紙が来て困っている方がいる場合、ぜひ、無料法律相談のことを教えてあげてください。

 

3 B型肝炎っていったいなに?

最近、B型肝炎訴訟に関するテレビCMを多く見かけます。B型肝炎とはいったい何なのか、なぜ病気なのに病院でもない法律事務所がCMを行っているのか、疑問に思われている方も多いと思います。

1 B型肝炎って?

B型肝炎とはウイルス性肝炎の一つで、場合によっては、肝硬変や肝細胞がんに移行する疾病です。B型肝炎は、大人になってから感染した場合は免疫により排除され、慢性化することはありませんが、幼少期(3歳まで)に感染した場合、体がウィルスを排除できず、ほぼ生涯にわたりウイルス感染が継続する場合があります(持続感染)。

将来にわたって肝硬変や肝がんを心配しなければならないケースは、子供の頃の感染、つまり「持続感染」の場合です。

B型肝炎ウイルスの感染経路は、出産時の母胎からの感染、性行為、入れ墨、覚醒剤の注射の回しうちなど、感染者の血液が体内に入るような行為です。

子供がこのような行為をすることはまず考えられないことから、母子感染以外に持続感染なんてほとんどいないんじゃない?と思われるかもしれません。しかし、日本では、国策の失敗により、現在27歳以上の多くの方が、幼少期にB型肝炎に感染し得る可能性が生じてしまったのです。

2 みなさんは、集団予防接種をしたことがありますか?

もし、医者が使用済みの注射針や注射器を交換せずに注射を打とうとしてきたら・・・、そんなバカなと思われるかも知れません。しかし、実は、日本では1988年まで、予防接種において、注射針、注射器の交換を徹底してきませんでした。そこで、27歳以上の方には、予防接種の回し打ちが生じている可能性が有り、そのため幼少期にB型肝炎ウイルスに感染する可能性が生じてしまった・・・これがB型肝炎問題です。

3 自分が持続感染かどうかを確かめるには

B型肝炎ウイルスに持続感染したとしても、9割の方は、肝炎や肝硬変に移行せずに、一生を終えられる可能性があります。そのため、他の病気に比べて、関心が持たれにくかったのも事実です。また、一般的な健康診断の血液検査では、B型肝炎ウイルスの有無まで検査されることはほとんど少なく、多くの方が感染の有無すら知らないのです。

ただ、「肝臓は沈黙の臓器」と言われるように、ウイルスが活発になり、肝臓に異常が出ても、直ちに自覚症状がでないところに怖さがあります。高齢になってから自覚症状が出たときには既に肝硬変、がんが進行している可能性があるのです。

自分が持続感染しているか確認するには、血液検査をする必要がありますが、大人になってからの持続感染はほとんどないため、一度感染していないことが確認できれば、今後の持続感染のリスクを心配することはありません。

なお、室蘭市では、室蘭保健所にて月2回検査を実施しており、予防接種を受けていた場合には無料で検査を受けることができます。

4 持続感染していた場合~正しく恐れよう~

持続感染していたとしても、9割の方は、発症せずに終わります。また、持続感染していたとしても年に1回程度、ウイルスの増減の経過観察を続けることで、感染を管理できますし、現在では、服薬によりウイルスの進行を抑える治療法も確立しています。早期発見により、被害の拡大を免れることができるのです。

5 訴訟により、適切な被害回復を!

予防接種が原因だった場合、国のせいでウイルスに感染させられたことになります。現在、集団予防接種による持続感染者は40万人以上に膨らんでいると試算されています。

そこで、これまで、患者の方と札幌弁護士会を中心とした弁護団が、国を相手として、責任追及を求めてきました。そして、平成23年、国との間で救済策に関する合意を勝ち取り、B型肝炎被害者への救済の間口が広がりました。

合意の内容は、①既に亡くなられた場合、現在、肝がんや肝硬変に苦しんでいる場合、③症状が出ていないがウィルスに持続感染している場合に分けて、それぞれに応じた和解金を支払うというものです。ただし、救済を受けるためには、訴訟を提起して、医療記録などの膨大な資料を患者側で必要があります。資料を用意し、国の要求する条件を満たさなければ和解金を受領することができないため、まだまだ完全な解決がなされたとは言えません。現に、和解が成立した方は、201510月現在でわずか1万2千人程度であり、40人中1.2人しか救済されていないのです。

弁護団では、平成23年の合意後も、より多くの方を救済するために、救済対象の拡大に向けて活動しています。当事務所も、全国B型肝炎訴訟北海道弁護団に加入し、多くの方々の救済を目指しています。

弁護士は救済を手伝うことは出来ますが、皆さんのウイルスの早期発見はできません。

日頃お世話になっている肝臓とこれからも仲良くつきあっていくために、ぜひ、「休肝日」だけでなく、肝臓の健康診断も考えたいものです。

 

4 今さらだけど聞けない…マイナンバーって?

マイナンバー制度の運用開始に伴い、昨年の10月より簡易書留で各家庭に「通知カード」の配達が始まりました。

1 マイナンバーって?

マイナンバー制度とは、正式には「社会保障・税番号制度」といいます。

個々人にランダムな12桁の数字を割り当て、これにより、社会保障や税金、災害対策などの分野において各機関が保有している個人情報を番号で紐付けする制度です。

これまで、国や地方自治体は、個人の情報を機関ごとに別々の番号で管理していたため(たとえば、住民票コード、基礎年金番号)、各種手続にあたってそれぞれの機関が持っている個人情報のやりとりをするには、いちいち氏名や住所などで確認する必要があり、非常に時間と手間がかかっていました。また、その結果として利用者も、自治体手続をお願いするにあたって、様々な添付書類の提出を求められることとなっていました。

そこで、社会保障、税金、災害対策の3分野に限ってそれぞれがもっている個人情報に共通の番号を設定することで、効率的に行政サービスを提供し、事務にかかるコストの軽減と、国民の利便性を向上させるのが、マイナンバーの目的です。

2 いつ、どのような場面で使うの?

マイナンバーの使用方法については、法律で厳格に定まっています。

たとえば、

・勤務先(アルバイト含む)へ自分と扶養家族の番号を届け出る

雇用保険や健康保険の手続、源泉徴収票の作成のため

・各手続の書類に自分の番号記入する

(例)年金、雇用保険、医療保険の手続、

生活保護、児童手当給付の申請

確定申告

証券会社、保険会社の支払調書

利用される場面は、当面は社会保障、税金、災害対策の3分野に限られますが、将来的には、医療関係やパスポートなどの分野にも活用を考えているそうです。

3 個人番号カードと通知カード

みなさんのお手元には番号が書かれたカードと、個人番号カードの発行に関する紙が一体となった通知書が届いていると思います。

今お手元にあるカードが「通知カード」と呼ばれるものであり、希望者には、来年以降「個人番号カード」という写真付カードが発行されます。

個人番号カードはマイナンバーを証明する公的書類(通知カード)と写真付身分証明書を合体させたものであり、これ一枚で、自分のマイナンバーの証明と、個人の身分の証明をすることができます。

今後、住基カードの代わりとなるものであり、当面は無料での発行が予定されています。

4 悪用の心配は?

マイナンバーに似た制度は、既にアメリカや韓国などでも導入・運用されています。アメリカでは、クレジットや口座開設にナンバーを要求していることから、番号を盗用した上でのなりすましでのカードや口座開設などが問題になっています。

日本では、他国と利用範囲やセキュリティ管理の方法が異なるため、今後どのような問題が生ずるかは不明ですが、公的手続などに記載する番号である以上、個々人でも悪用されないよう管理に十分気をつける必要はあると思います。

また、企業では、給与を支払う従業員のマイナンバーを保持・管理する必要があります。マイナンバーの管理は厳格に求められ、関係者のマイナンバーを第三者に提供したり、故意に流出させたりした場合は、厳罰に処されます(例:理由なくマイナンバーをとりまとめたファイルを他者に提供した場合4年以下の懲役又は200万円以下の罰金)。また、マイナンバーの流出は刑事罰の対象となるだけではなく、会社の大きな信用問題となり得ます。企業では、誰がどのように管理するのか、事前にしっかり取り決めておくことが必要でしょう。

5 マイナンバーとどうつきあっていくか

今現在では、具体的な運用がなされておらず、マイナンバーでどのように便利になるのか、どのような不安が出てくるかは未知数です。

しかし、今後は、色々な場面でマイナンバーの記入を求められることは避けられません。管理側に不正な利用や流出があってはならないのは当然ですが、私たちも、自身のマイナンバーについては、使い道を把握し、第三者にみだりに教えないなど、しっかり管理を行う必要があると言えるでしょう。

 

5 老後に考えておきたい「2つ」の来るべきとき

 

自分や家族の将来を考えるとき、「来たるべき時に備えて」というと、自分の死後のことを連想される方が多いと思います。実際に、自分が死んだ後に自身の財産をどうするか考えておくのは大切なことです。

一方で、自分の「来たるべき時」とは、必ずしも、自身の死のときだけではありません。しっかり死後のことを考えて遺言を残しておいたとしても、その前に認知症等の病気や事故で、自分の判断能力が落ちてしまった場合、周囲の人たちは、亡くなった時とはまた別の悩みを抱えることになります。

 

施設の入所契約ができない

息子夫婦と離れて一人で元気に暮らしていたAさんは、あるとき交通事故に遭い、長期間の入院をすることとなりました。当初はしっかりしていたAさんでしたが、いつ退院できるか分からない入院生活や、出歩けない生活に疲弊し、認知症が急速に進んでいきました。時が経ち、事故の怪我は完治したものの、Aさんは自分の周囲の人や財産についてほとんど認識できない状態になっており、事故前のように一人暮らしができない状態となっていました。Aさんの息子夫婦は、Aさんを有料施設に入所させようと思いましたが、Aさん自身は一人で契約が出来ません。また、息子夫婦には育ち盛りの子供がおり、Aさんの生活全般を支える余裕がありません。そこで、とりあえず、Aさんの今の生活費や入所費用をAさんの預金で賄おうとしましたが、銀行からは、本人からの委任状がないと一切預金はおろせないと跳ね返されてしまいました。

突然の相続

Bさんは、年齢のせいか、徐々に認知症が進んできましたが、これまでずっとBさんの家族が自宅で献身的にサポートを行ってきました。Bさんには大きな財産もなく、今後もBさんの家族が自宅で面倒をみていく予定だったので、Bさんの家族は、Bさんに成年後見人を付ける必要はないと考えていました。ところが、ある日、Bさんの姉(生涯単身)が莫大な遺産を残してなくなり、兄弟のBさんやBさんの兄や妹が相続人となることが明らかになりました。Bさんの息子が、Bさんの兄弟との遺産分割協議に参加しましたが、Bさん本人の意思決定がないと手続が進まないと言われてしまいました。

毎日元気に一人で生活していたのに

本人が元気にやっていると思って安心して一人暮らしをさせていたところ、気がついたら高額商品や不要なリフォームの契約を結んでいたなど、本人の行動から判断能力が落ちていたことが判明することもあります。その場合の被害回復は弁護士などに委ねなければならない一方で、そのまま放っておくと、家族が知らないところで本人が新たに消費者被害に遭ってしまう可能性があります。

 

この場合どうするか~法定後見制度の活用

AさんのケースもBさんのケースも、法定後見制度(裁判所に依頼して、本人の代わりに財産や契約について決める人を選んでもらう制度)を使うことで、良識ある第三者が、AさんやBさんの代わりに必要な財産を引き出したり、契約や相続の手続を行うことになります。逆に言うと、いくら家族だからといって、法定後見制度を使わずに契約を行ったりすることはできないのです。

しかし、この手続をするには、戸籍謄本や医師からの鑑定書を取り寄せたり、裁判所に何度も行ったりしなければならず、親族にとって大きな負担になります。また、法定後見制度を使った場合、裁判所が財産管理にふさわしい人を独自に選任することになるので、親族が後見人の候補者として名乗り出ても、自身が選任されず、全く見ず知らずの専門家が選ばれることもあります。

 

自分でできる事前準備~任意後見制度

判断能力が落ちてしまったあとは、もはや自分ではどうすることもできなくなってしまいますが、元気な今のうちにこのような時に備えて準備をすることはできます。任意後見制度の活用です。

任意後見制度は、将来自分に判断能力がなくなってしまった場合に備えて、予め財産に関する事務をしてもらうことを本人が自ら選んだ人に頼み、それを契約(任意後見契約)として結んでおく制度です。

成年後見制度と大きく違う点は、任意後見人(自分の代わりに事務を行う人)を自分で決めることができる点です(任意後見人は、裁判所が選任する任意後見監督人によって公正に事務を行っているかどうか監督を受けることになります。)。この人なら、自分のことを思って、きちんと財産を守ってくれるだろうと思える人を、元気な内に自分で選ぶことができるのです。

もっとも、任意後見制度は、公証人が作成する公正証書によって、契約したことを残しておかなればならず、自筆の手紙などでの書き置きは一切効力をもちません。

そこで、元気なうちに、自分の今後を考え、それを実現してくれる人を選び、公正証書を作る必要があります。そうしておくことで、自分がいざ判断能力が落ちてしまった場合でも、自分の親族に戸惑いや迷惑をかけずにすむのです。

ただし、任意後見制度は特定の人との契約なので、どんな人を選ぶのか、どういうことをお願いするのか、お礼に何か遺産を残すのかなど、よく考えて利用する必要があります。

 

「来たるべきとき」に備えて弁護士がサポートいたします

当事務所では、任意後見制度の利用方法から、それに応じた遺言作成まで、2つの「来たるべきとき」について、ご本人やご家族の今後を踏まえてアドバイスを行っています。

ぜひ、当事務所にご相談にきていただくことをおすすめします。

 

 

 

6 裁判員裁判~裁判に縁がない人が裁判に関わるという意味

普段、みなさんは様々な職種で活躍されていると思います。

当然ながら、普段は、自分がやっている職業と異なる仕事を依頼されることはそうそうないかと思いますが、ある日突然、裁判所から裁判に参加して欲しい、というオファーが来ることがあります。すでにニュースなどでなじみ深くなってきた裁判員裁判について、簡単にご説明します。

裁判員裁判って?

すでにニュースなどでおなじみの方も多いかも知れません。

特定の刑事裁判について、市民から選ばれた代表(=裁判員)が、裁判官と共に審理に参加する制度です。こちらは、2009年から始まった制度であり、まだまだ歴史は浅い制度ですが、既に8692人の被告人に対して裁判が行われ、これらの裁判に合計で65875人(補充裁判員16711人含む)の国民が参加したことになります。

しかし、そうは言っても、裁判員経験者は全国民の比率からいうとまだまだ2000人に1人程度であり、そうそういるものではありません。

しかし、裁判員は20歳以上の若者で、特定の職業(我々弁護士や、裁判官職員、警察官、自衛官など)に就いていない人であれば、誰でも選ばれる可能性があります。

あと10年、20年したら、ご自身やご家族が選ばれるかもしれません。

刑事裁判ってどんなことをするの?

刑事裁判は、被告人が有罪か無罪か、有罪である場合どのような刑を科すべきかを、裁判官・裁判員が、検察官と弁護人が用意した証拠を取り調べた上で判断する手続です。法廷では、検察官や弁護人が提出する証拠について、実際に説明を受けながら中身を見たり、証人に質問をしたりして取調べます。

裁判員は、これらの結果をもとに、①有罪か無罪か(被告人が犯罪を行ったといえるか)②有罪である場合、いかなる刑を与えるべきかについて判断します。

判断は、全ての審議が終わったあとに裁判官3人と裁判員6人で法廷とは別室で行われます。裁判官が進行を行いながらまんべんなく裁判員の意見をきいた上で、最終的には、多数決で決定します。裁判員には、自身の率直な意見を出すことが求められます。

なぜ、裁判員に判断を求めるのか

家を建てるのであれば大工さんが、お米を作るなら農家さんが、他の誰よりも一番よいものを作りあげることができるはずです。当然ですが、それを生業としている人ならではの長年の工夫や経験こそがいい商品作りのキモだからです。

裁判についても、長年法律の勉強を続けて試験に合格し、日常的に裁判に携わっている裁判官が、自分のこれまでの経験をもとに裁判をすればいいはずです。

それなのに、どうして、刑事事件では、一般市民を無作為に集めて、判決を考えてもらうのか。

これについては、人により賛否を含め様々な考え方がありますが、これまで刑事裁判に関わって来た経験からすれば、私は、裁判員に参加して貰うことには大きな意義があると思っています。

刑事弁護人の仕事をして常々思うことは、被告人や被害者、その家族など、様々な人たちの感情の交わり合いを無視して仕事はできないということです。たとえば、被告人に対する気持ち一つとっても、被害者からは憎悪の気持ち、被告人の家族からは、家族としての愛情、被告人の職場の社長からは、被告人がいなくなって事業が進まないという困惑した気持ちなど、様々な気持ちが交錯します。

刑事裁判に関わるに当たっては、理論的な部分だけではなく、関わる側にも、一人の人間としての「ナマの気持ち」をもとに考えることが強く求められているのです。

その一方で、弁護士も検察官も、そして裁判官も、難しい試験には合格していても、全ての人間的な経験を持ち合わせているわけではありません。男であれば女心について完璧に理解することはできないし、年を取っていれば、今の若者が何を考えてるかをつかみにくいし、逆に若ければ、子供を育てあげた親の気持ちや、様々な経験をした年長者の気持ちを真に理解することはできない。

被告人の行動一つとっても、様々な人から見ればいろいろな考え方が出てくるのが当たり前なのです。

弁護士には守秘義務があるので絶対に誰かに相談することはできませんが、弁護人として活動している時は、様々な年代の人に意見を聞いてみたくなるときもあります。

そういった意味で、国民の中から無作為に選び、審理に参加して貰うという試みは、個人的には、有罪、無罪含めて被告人に本当にふさわしい刑を決めるというためには非常に意義のあるものと思います(もっとも、参加する人の負担などへの配慮など、制度自体には改善点はあると思いますが・・・)。

刑事裁判について考えるということ

とはいえ、突然裁判員に選ばれたとしても、困惑の気持ちの方が強いと思います。当事務所では裁判員裁判に関する相談も受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。

また、今お話ししたのは個人の考え方の一つであり、刑事裁判の中身、裁判員制度のあり方については色々な意見があっていいと思いますし、学校や会社など様々な組織の中で意見交換をする価値があるものだと思っています。なにより、実際に手続に関わっている弁護士にとっては、そのような意見が交わされる場はかけがえのない機会になります。

当事務所では、学校や各集会での講師や勉強会のオブザーバーとしての参加についても積極的にお引き受けさせていただきます。ぜひ、お気軽にご相談ください。

お問い合わせはこちら